鍬や鋤で土を耕し、溝を掘ったのでしょう。水門や大きな木を杭で留めた制水遺構があり、あぜと思われる杭や矢板が広い範囲で見つかっています。
その道具として材料が豊富にあり、加工しやすい木製の道具が使われました。里田原遺跡からは鍬や鋤・竪杵などの農具のほかに、斧や手斧の柄など工具、弓やタモなど狩猟具、椀や槽・しゃもじ・杓子などの日用具、柱やはしごなどの建築部材が見つかっています。舟形や陽根形、漆塗り杯形木製品など祭祀用具と考えられるものや用途がわからないものもたくさんあります。
里田原では鍬や鋤、斧柄の未製品があり、鍬の製作工程がわかる資料も見つかっています。また、磨製石斧や方柱状片刃磨製石斧・石ノミ等の石製の工具が破片まで含めて数多く出土していることから、これらの木製品を作っていたのではないかと考えられています。鍬や鋤にはカシ、手斧の柄にはサカキ、弓にはカヤノキなど特定の樹種が使われており、木の特性を活かした選定がなされていました。
里田原遺跡は土器や石器だけではわからない豊かな初期の農耕生活をうかがい知ることができる貴重な遺跡です。